本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

〈本〉『ジハードと死』

【宗教が根源にあるのではない】

妙に腹に落ちる

出口治明氏が、著書『哲学と宗教全史』に関連して紹介していたので興味を持った一冊。

 

ジハードと死

ジハードと死

 

 

ちなみに、目を引いたのはこちらの記事。

 

 

出口治明氏は『哲学と宗教全史』を書き終えてからこの『ジハードと死』を読んだようだが、このような感想を持ったと語っている。

 

むしろ宗教と関連づけてこういう人々を説明することが問題の本質を見えにくくするという、すごく面白い指摘をしているのです。

 

『ジハードと死』では、テロリズムの根源にあるのは宗教ではない、イスラームが過激化したのではなく現代的過激性がイスラームの中に入ってきたのだとしている。

 

著者のオリヴィエ・ロワの指摘は、とても新鮮なものばかりだった。

 

彼らを魅了しているのは、理想郷の建設ではなく、反乱そのものなのである。暴力は手段ではなく、目的だ。「明日なき」暴力である。

 

ダーイシュがテロリズムを生み出しているのではない、すでに存在しているプールから汲みあげているのだ。

       〈注〉本書ではイスラーム国をダーイシュと表現している。

 

本書で主張されていることの土台は膨大な数のテロリストたちを分析したものだ。それであるからなのだろう。妙に腹に落ちる。

 

彼らが過激になるのは、教義をよく読んでいないせいでもなければ、誰かに操られているせいでもない。彼らが過激なのは、そうなることを選択したからであり、過激であることだけが魅力的におもえるからだ。

 

本書の雑感

やや手を出しにくい一冊に見えるかもしれないが、およそ200ページ程度なので読むのにそれほど時間は掛からない。訳者あとがきを読めば興味を掻き立てられて本文に向かうことになるのではないか(余談だが、訳者あとがきや解説は、その本に当たる上での補助線になり得る可能性が高いので、私は必ず最初に読んでいる)。

 

著者が日本語版への序文で書いている通り、日本に住んでいる我々からすると強い関心を引き立てるものではないかもしれない。しかしながら、日本にもテロリストを生み出してきた歴史がある。世界に比べて宗教と縁遠い日本人だからこそ、著者の主張は腹に落ちてくるのかもしれない。そう思った。