本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

台風がぶっ飛ばしたもの

【いつかなりたい、訪ねてみたい】

おのれ、台風め

久し振りに(本当に久し振りに)幹事も務める読書会に参加するはずだったのに、台風が移動手段をことごとく破壊して、読書会をぶっ飛ばしてしまった... おのれ、台風め。

 

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

 

 

『OODA LOOP』を紹介しようと思っていたのだが、ぎりぎりでこちらの本との出逢いがあり考え直した。よし、今回はこいつにしよう。久し振りの読書会で紹介するならこっちの方がふさわしい。と意気込んでいたのに、台風のせいで... おのれ、台風め。

 

本の行商人

台風にぶっ飛ばされたので不発に終わったのだが、次回参加する際には是非紹介したいと思っている。

 

イタリア北部にある山深い村、モンテレッジォ。美しい自然に囲まれているという以外にこれといった特長がない、世の中から忘れ去られてしまったような村。

 

村にいては食い扶持がないので出稼ぎに出る男たち。ところが、景気が悪くなるとそれすら叶わなくなる。モンテレッジォには何もない。頼れるのは己の腕力のみ。さて、どうする。何もないから... なんと本を売り歩くようになった。そう、本の行商人だ。

 

貧しかったおかげで、先人たちは村を出て国境をも越えていった。命を懸けた行商が、勇気と本とイタリアの文化を広める結果へと繋がっていったのです。

 

本が庶民に広がっていく

本好きならば分かるはず。本好きには堪らない。本好きを刺激する言葉、言葉、言葉。著者が実際に足を運んで目で見て心で感じた情景描写が堪らなく、本好きの心を刺激する。

 

イタリア全土に本が広がっていく当時の背景が興味深い。ナポレオンの勢力圏で工業化が進み、暮らしにゆとりが出始めると本の購買層が広がっていく。とはいえ、富裕層以外にとってはまだ手の届かない高嶺の花だ。そこで本の行商人たちの出番になる。

 

村人たちは底辺の行商人だった。青天井で売る。町中の書店で売る本とは違っていた。価格も、格も、読者も。

 

当時の出版社はまだ小規模で在庫を抱える余裕はない。モンテレッジォの行商人たちは、彼らから売れ残りや訳ありの本を集めて、売りに出たのだ。彼らの腕力と脚力で。こうして本が庶民に広がっていく。

 

スーパー行商人

行商人たちが運んでくる本を心待ちにしていた人々は、これまで読書を嗜んでいた階層とは別の人種。高価な本や難解な本ではない、手に届く価格で冒険や恋愛など気軽に読めるものが歓迎された。それだけではない。

 

各地で本を売り歩くモンテレッジォの行商人の臨場感あふれる話に夢中になる。行商人が運んでくるものは本だけではなかった。彼らの体験とともに本を運んでくるのだ。そう、彼らは単なる行商人を超えた、本のスーパー行商人なのだ。

 

青天井で本売りを重ねるうちに、行商人たちは庶民の好奇心と懐事情に精通した。客一人ひとりに合った本を見繕って届けるようになっていく。

 

今回の雑感

この本で得た感動を、是非読書会の場で共有したかった。しつこいようだが、おのれ、台風め。やってくれたな...

 

自分たちの強みは、毛細血管のようにイタリアの隅々まで本を届けに行く胆力と脚力である。本は、世の中の酸素だ。皆で手分けして、漏れなく本を売り歩こう。

 

あぁ、私はこのような本のスーパー行商人になりたい。そして、いつかモンテレッジォを訪ねてみたい。