本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

寂しいけどこれ現実なのよね

【腹に落ちずとも得られるものはある】

腹に落ちない

しばしば味わいたくはないものの、生きていれば腹に落ちないこともある。それにしてもこの見事な腹に落ちない感覚をどう捉えるべきだろうか。貴重なものだと考えるべきなのだほう。自分が生きている現実だけが全てではないのだから。

 

ティール組織』を読んだ時と似たような読後感を味わうことになった。

 

allblue300.hatenablog.com

 

本書の内容がそのまますぐに適用できる日本企業や職場は多くはないでしょう。アメリカ固有の労働慣行を前提に書かれているように感じる箇所もあります。

 

監訳者による少し長めのまえがきより。もちろん、邦訳して日本に紹介しているわけなので、それでも・・・と続くわけなのだが、この本に書かれていることは、総じて腹に落ちるものではなかった。

 

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

 

 

ファンタジー

企業と個人とが、お互いに時間と労力とを投資しようと思えるような働き方のモデルを示している。どこか別の惑星で起きていることのように感じられる。

 

綺麗事に聞こえてしまうのは、どう考えてもそれはパワハラですよね!?やりたいことばかりやらないでやるべきことをやってくださいよ!!という状態が横行している現実と向き合っているからなのだろうか。

 

ティール組織』を読んだ時は「ファンタジー」という表現を使ったが、まさにそれ。会社を辞める時の対話がもっと建設的なものになったら良い。たった数年で転職していったとしても会社と個人が終身信頼(終身雇用ではなく)を築けたら良い。

 

何を言っているんですか??と思う一方で、そのように感じてしまう自分がもの悲しく感じられる。自分にあるのはある種の諦めであり、じゃあ俺が現実を変えてやるよ!!という胆力があるわけでもない。悲しいけどこれ現実なのよね、なのだ。

 

ほとんどの会社には文章の形で表現された価値観がある。大半は「高品質を目指して全力を尽くします」といった無害な常套句の羅列であり、知性への侮辱といっていい。

 

マスターベーション

このようなところで「まさに!」と手を打ってしまうのがさらに悲しい。私のような感覚に至るまではいかずとも、会社のホームページに堂々と記載されているビジョンやミッションに「・・・」となってしまう人は少なからずいるのではないだろうか。

 

これ以外にも、心から社員のことを思って行っている施策というよりも、これは会社のマスターベーションだなと感じてしまうことが散見される。それを会社説明会などで堂々と提示して、わが社は社員を「人財」と考えています!などとアピールしている様子がありありと浮かんでくる。

 

これは会社のマスターベーションではないだろうか。

 

今回の雑感

悲しいけどこれ現実なのよね。このような読書は非常にもの悲しい。これだけで終わってはあまりにも寂しい。

 

幸い参考になるところもあった。リンクトインという会社が採用している、「大文字の変革(Transportation)」と「小文字の変革(transformation)」だ。昇進だ昇給だという大文字の変革ではなく、武器になる経験を積んだり新しい知識や知恵を身に付けるのが小文字の変革と紹介されていた。

 

これには腹落ちがあった。立場上、昇進だ昇格だというところに手を突っ込んでいけないので、それならば小文字の変革で部下たちの後押しをしていこう。改めてそう思わされる読書になった。腹に落ちずとも得られることはあるものだ。