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読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

〈本〉『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』

【何とも凹まされる読書だった】

腹に落ちなかった

気にはなっていたがスルーしていた一冊。とあるレビューを見て読んでみる気になった。読み方を元に戻したので(縦から横へ)がっちり読み込んだわけではないのだが、結論としては、私の腹には落ちてこなかった。当の気になるレビューが指摘していることも踏まえて考えてみたのだが、それでもやはり腹に落ちなかった。

 

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 

 

バリバリの達成型組織

ティール組織とは何だろうか。組織モデルが発展してきた変遷を、色調も交えて次のように分類している。

 

無色→神秘的(マゼンタ)→衝動型(レッド)→順応型(アンバー)→達成型(オレンジ)→多元型(グリーン)→進化型(ティール)

 

今の時代における衝動型組織はギャングやマフィアで、順応型組織の模範となるのがカトリック教会、軍隊、公立学校システムだ。そして、達成型組織を具現化したのが現代のグローバル企業である。

 

多くの民間企業で圧倒的に見られるのが達成型組織で、その目的は競争に勝つこと、利益を獲得して成長を目指すことだとしている。比較的多くの人たちがこの達成型組織に身を置いているのではないだろうか。ちなみに、私が属する会社はバリバリの達成型組織だ。社員の誰も否定しないだろう。

 

では、多元型(グリーン)組織は何かというと、権限の委譲が行われ、価値観を重視する文化と心を揺さぶるような(!)存在目的があり、多数の利害関係者の視点を生かすような組織だという。例として挙げられているのは、サウスウエスト航空ベン&ジェリーズだ。私が属する会社は、条件に挙げられている三つが一つも当てはまらない。

 

多元型組織だけでも稀有な存在だが、この上位概念として据えられているのが進化型(ティール)組織だ。

 

私たちが自分自身のエゴから自らを切り離せるようになると、進化型への移行が起こる。

 

はっきり言って、気持ち悪い

腹には落ちなかったものの、本書で印象に残ったのが「恐れ」に関する記述だ。進化型組織への移行を妨げる大きな阻害要因は恐れであり、組織の意思決定を左右する大きな力は自己防衛本能であるとしている。衝動型、順応型、達成型、いずれの根底にあるのも恐れであり、競争相手に満ちあふれた世界で、血みどろの真っ赤な海を泳いでいる。

 

これには妙な納得感があった。なるほど、自分は恐れに突き動かされて毎日働いているのかと。何とも、まぁ、もの悲しく感じてしまった。でも、それが現実なのだ。

 

進化型の思考法で考えると、人間は完全に自分らしさを保ちながら、組織の存在目的の達成に向けて努力することができるという。組織の存在目的のおかげで使命感と精神が研ぎ澄まされ、自分という全存在に活力がみなぎる時に人間は最も生産的になり喜びに満ちあふれる。うーん、主張はわからなくもないのだが、まったく腹に落ちない。

 

こう問いかけよという。どの判断が組織の存在目的に最も寄与するか。この役割は組織の存在目的にどう寄与するか。この顧客や仕入先は組織の存在目的に寄与するか。はっきり言って、気持ち悪い。しかしながら同時に思った。自分のこの思考は、達成型組織にどっぷり浸かっている証なのだろうなと。

 

温かみを感じない

本書で好感が持てるのは、なかなかはっきりしていることだ。達成型から一足飛びに進化型への移行などあり得ないのだろうが、著者によると少数ながらそのような組織もある。ではその可能性を判断するものは何か。

 

CEOが乗り気でない場合、あなたの時間と精力を組織改革プロジェクトに注ぐことはそれほど意味がない(中略)そうなると、あなたができることはせいぜい、時間の経過とともに進化型組織を支持する人材が取締役になれるかどうかを見極めようとすることぐらいだろう。

 

はっきり言ってくれるじゃないか。わかりやすくて良いのだが、温かみを感じない。コンサルタントらしいと思った。この感じ方にははコンサルタントに対する私の偏見が含まれているのだろう。もちろんコンサルタントにも良し悪しがあり、もしかしたら著者は前者の方かもしれない。が、少なくとも温かみは感じなかった。

 

本書の雑感

この本を読むきっかけになったレビューでは次のようなことが書かれている。納得して向き合える経営指標を持って、成果を上げるために自らで管理する。組織の存在意義を最も理解している従業員自身が何をもって成果と捉えるかを自らで考え、一部の利害関係から降り注いでくる注文を払いのけ、そんな輩から自らの統率権を取り戻す。それが進化型組織の肝なのだと。

 

確かにその通り、だがしかし、言うは易し行うは難しだ。綺麗事を否定するつもりはないが、綺麗事にしか聞こえない。こう感じてしまう自分が何とも悲しくなる。今現在の立ち位置に対する思いや自らが抱いている諦めを再認識させられることになり、何とも凹まされる読書になった。

 

私の中でこの本はファンタジーに分類された(もちろんジョークだ)。ただし、自分にとってフィクションに感じられる世界を追体験しておくのは悪くない。達成型組織で働くよりは進化型組織で働く方が気持ち良いに決まっている。しかしながら、達成型組織でしか生きられない人間もいるんだろうなということも感じさせられた。凹まされながらもなかなか良い読書だった。やれやれだ。