本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

〈本〉『OODA LOOP 次世代の最強組織に進化する意思決定スキル』

【再読必須の一冊】

解説が良い

まず始めに。この手の本はあとがきや解説から読むことを常としていたが、読書感が鈍っているせいか、つい真正面から取り組んでしまった。もちろん、悪くはない。が、より良いのはやはり「おしり読み(あとがきや解説から読む私の性癖)」だった。特に、この本に至ってはそうだ。

 

OODA LOOP(ウーダループ)

OODA LOOP(ウーダループ)

 

 

訳者の原田勉氏が、長い訳者解説を書いている。「いま、なぜOODAループなのか」というものだが、これが良い。加えて良いのが、各章の最後にも訳者が簡単なまとめをしてくれているところだ。こんなことを言うと著者ばかりか訳者にも叱られそうだが、訳者の解説を読むだけでも十分勉強になる。

 

PDCAはOODAループの一例に過ぎない

OODAは知らなくても、PDCAを知らないという人はいないだろう。Plan、Do、Check、Action(計画、実行、評価、改善)の頭文字をとってPDCAPDCAサイクルと言われる場合もある。さて、ではOODAループとは何だろうか?

 

OODAループの概念図に示されている学習ループは、「観察、情勢判断、意思決定、行動」である。この学習ループをいかにして実行していくのかは、企業によって異なる。PDCA(Plan Do Check Action)サイクルはその1つの具体例になる。

 

日本語版への序文から引用させてもらった。PDCAの上位概念と捉えても良いだろうか。本書に良く登場するトヨタ生産方式もOODAループの中に含めることができる。著者はそのように指摘している。

 

スピードが命

本書では「機動」という言葉が鍵になっている。機動とは辞書的な意味では、対象となるものを状況に応じて速やかに展開・運用することだ。訳者も補足しているが、マイケル・ポーターを始めとした戦略論は、スピードやそれを生み出す個々の行動はある程度切り捨てている。しかしながら、ビジネスの世界ではスピードがあれば、その他の要素における劣勢を跳ね返すことができる。

 

OODAループを高速で回す。この表現も繰り返されている。そう、ビジネスの世界においてはスピードが命なのだ。早ければ良いというものではないが、遅いよりは百万倍マシなのである。仕事の質はその中身とスピードとのかけ算だということを改めて認識した。そう、スピードが命なのだ。いくら中身が立派で精度が高いものでも、遅すぎては零点になってしまう。

 

OODAループとは何か?

Observe、Orient、Decide、Act(観察、情勢判断、意思決定、行動)の頭文字をとってOODA、OODAループ。スピードを重視するというだけあって、そもそも意思決定をすっ飛ばして行動に移る(つまり、OOA)のが理想というのも興味深い。

 

OOAを可能にするために求められるのが、暗黙的コミュニケーションというところがこれまた興味深い。いかにも日本人らしい以心伝心や阿吽の呼吸の世界が、スピードを軸にした競争戦略を実行するための不可欠な要素だというのだ。非常に興味深い。

 

この暗黙的コミュニケーションの土台となるものが、相互理解、皮膚感覚、リーダーシップ契約、焦点と方向性という四つの要素だ。これらの説明は省くが、第5章「OODAループを高速で回すための組織文化」で細かく説明されているので、興味がある方は是非本書を読んでみて欲しい。自分の身に落とし込んで考えさせられることもあった。

 

本書の雑感

まだざっと読んだみただけなのだが、示唆に富む内容だった。何よりもしてやられたと思ったのが、OODAループの実践であるトヨタ生産方式を、大野耐一の『トヨタ生産方式』を見直したい、読み直したいと思わされたことま。ダンボール箱の中に埋もれていた、久しく目を通していないこの本を引っ張り出すことになった。

 

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

 

 

なぜを五回繰り返すばかりが印象に残っているが、改めて読むといやはや参考にすべき箇所が多くて驚いた。私は製造業に勤める身ではないが、それでも参考になることが多い。製造業に身を置く人であれば目から鱗がボロボロと落ちてしまうことになるだろう。

 

再びこの大名著に触れさせてもらったのは大きな意味があった。トヨタ生産方式がOODAループの実践であるというのであれば、本書を舐めるように読み尽くす意味があろうというものだ。再読必須の一冊だった。