本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

〈本〉『部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書』

 これぞと思ったことは実践してなんぼだ】

病があけて手にした二冊の本

健康問題にぶつかり、本との付き合い方を見直されることになった。本棚に鎮座する蔵書を読み直そう。そう思い立った経緯は、前回の投稿をご参照願いたい。

病があけて(まだ治療中ではあるのだが)、手にしたのはこちらの二冊だった。蔵書であろうとも本との出逢いは何か意味があってのこと。そう思っている。何かがあり、この二冊を手に取らせたのだろう。

 

  

社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則

社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則

 

 

鈴木喬さんの本も抜群に面白い

より良い自分にしていくために本を読む。今日よりも一回り大きな明日を作るために本を読む。そう考えると、今の私にとって「これぞ」という示唆を与えてくれたのは、出口治明さんの本だった。

鈴木喬さんの本も抜群に面白い。が、今の私にはやや世界が遠い内容だった。タイトルだけを見れば一目瞭然なのだが、マネージャー(部長や課長)の話と経営者(社長)の話とでは、目線が異なるのは避けられない。もちろん、経営者目線の話が参考にならないというわけではない。全くない。マネージャーであろうが経営者の目線で参考になることはたくさんある。例えば、こちら。

 

だからこそ、マキャベリ韓非子を読んで、自分の尻を叩いているのかもしれない。

 

まず、怖れられろ。慕われるのは、その後だ。


人間誰しもそうかもしれないが、周りの人間にはできるだけ嫌われたくない。私は特にその思いが強いと感じている。甘ちゃんだ。鈴木喬さんは「僕は根が甘ちゃんなところがある。」からこそマキャベリ韓非子を読んで自分の尻を叩いているという。この本を読んでいると「本当かよ(笑)」と笑ってしまうが、自分のことを分かっているからこその戒めであり、気を引き締めているのだろう。大いに学ぶべきところだ。

二番目の引用には、ご存知の方も多いと思うが「ただし、憎まれてはならない。」という但し書きがつく。これはできない。情けないことにできない。どうしても逆になってしまう(泣)というよりも、怖れられたことがない(もしかしたら、本人がそう思っているだけかもしれないが)。

鈴木喬さんの言葉が腹に落ちてくるのは、その経験と筆致(ややざっくばらん過ぎる感はあるが笑)によるものだろう。同じ指摘をされても、言われ方によって納得できたりできなかったりするものだ。豪快すぎて、私は上司と持つのはごめんだが(笑)


既に実行していることを確認する

さて、出口治明さんの本に軍配を上げたのは何故なのか。今すぐに実践すべしと思わされたことが随所にあったからだ。既に実行していることもある。例えば、以下。

 

【的確な指示を出すための4条件】
・条件①「期限」を示す
・条件②「優先順位」を示す
・条件③「目的・背景」を示す
・条件④「レベル」を示す

 
毎回できているかというとやや汗が出るものの(時に③もしくは④が漏れていなかったかと振り返ることはある)、指示を出す時に意識していることだ。④に含まれるかもしれないが、完成形の青写真を示しておくことも大切だ。特に最終決裁者と完成形のイメージを確認しておくことが必須。無駄な作業をさせないためにも必ずやるべきことだと思う。

もう一つ、実践していることを紹介したい。これは経験上、個人差が出やすいものなので参考になると思う。もしかしたら、これはスーパーマンであればあるほど、陥りやすい罠なのかもしれない。

 

衝撃力(影響力)=質量×スピード

 
私が携わっている仕事では、自ら報告書を作成したり、他人が作った報告書を内容確認するという業務が少なからずある。報告書の完成度は高い方がいいに決まっている。だが、日数が経てば経つほど報告書の価値が下がっていくのはご理解頂けるだろう。それっていつの話だ!?と突っ込まれてしまうことになる(実際に突っ込まれたことがある)。

質量を人間の能力に置き換えると、能力を上げれば影響力も増すが、人間ちょぼちょぼ主義者(出口治明さんがよく指摘すること、興味がある方は本書の冒頭に出てくるので読んでみてほしい)の出口治明さんからしたら人間の能力に大差はない、となる。

では、何をするか。そう、スピードを上げることが肝要になってくるわけだ。私は、完成度×提出期限についてはしばしばメンバーに話をしている。決して適当な報告書を書けということではなく、スピードを意識してやっていこうということだ。時に、完成度に目を奪われて提出日が三ヶ月後になるというものがあって唖然としたことがある。これでは影響力(報告書の価値)が限りなくゼロになっていると言っても差し支えないだろう。

読み直しに限ったことではないのだが、この手の本を読むのは大きな意味がある。今の自分にできていることを確認し、それが漏れなく抜けなくできているか、もしや足りていない点がないかといったことを確認する。その良い機会になると思うのだ。


今の自分にできていないこと

さて、今回の再読で、これを意識しなければならないと思わされたことがあるので、まずは引用したい。

 

「人にしてもらう」のは、上司の仕事の基本です。

 

「仕事を与え、部下に忙しく働かせる」のは、上司の務めです。

 

マネージャーは、60点で我慢する度量を持つべきです。

 

仕事ができる上司は、「球離れ」がいい。

 
部下に仕事を任せる。本書のタイトルそのものだ。言葉にすると簡単なのだが、意外と難しい。出口治明さんは「球離れがいい」といった表現などで、とても分かりやすく、仕事を自分で抱える上司はアホである、ということを伝えている。副題にもある通り、上司は部下に仕事を任せるべきで、プレイング・マネージャーになってはいけないのだ。

実は一番難しいかもしれないと思ったのが、下線を引いた引用だ。できる人であればあるほど、先程使った言葉で言い換えれば、スーパーマンであればあるほど、これは難しいのかもしれない。名選手は名監督にあらずというのもここに繋がってくるのだろうか。

この我慢する度量をどのようにして実務に落とし込むべきかを考えさせられた。百点以上を目指して仕事をするのは当たり前だ。とこらが、この百点の水準は人によって異なる。自分の百点の六掛けかぁ、と思わなくはないが、やり方を工夫すればいい。百点に向けての指摘は交えながらも、六掛けの水準に必須と考える点についてはしっかりと指摘する。そして、後は任せる。それでいい。


本書の雑感

長々と綴ってきてしまったが、鈴木喬さんの本にしても、出口治明さんの本にしても、これぞと思ったことは実践してなんぼだ。すぐやる、必ずやる、できるまでやる。これは日本電産永守重信さんの言葉だが、実践しなければ何の意味もない。単なるマスターベーションだ。やはり、この手の本は定期的に目を通すと良い刺激になる。次は永守重信さんの蔵書を再読しよう。