〈本〉『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』
【ワインはニューワールドかイタリアを飲もう】
一般常識としてのワイン
佐藤優が推薦しているので読んでみた。ビジネスエリート、とは異なる世界に住んでいる自分としては(現状を正しく認識することは大切だと思う)、"身につける"必要はないと判断している(それに、他に身につけなければいけないことがある)。しかしながら、一般常識としてワインの歴史や生産地を勉強するのは悪くないだろうと思って読んだが...
鼻持ちならない?
著者は、オークション会社クリスティーズのワイン部門で、10年以上に渡りワインスペシャリストとして活躍した人物。とは言っても、クリスティーズとかワインスペシャリストとか言われても良く分からない。
高い文化水準を兼ね備えるエリートであるかどうかの「踏み絵」としての役割も果たしているのです。
踏み絵とは、また大層な例えだ。タイトルからしてこのような言葉が出てきてもおかしくはない。佐藤優も「ワインはエリートにとっての最強のビジネスツールだ」と推薦している。鼻持ちならないから嫌だと思うなら、そもそも読まなければいい。というわけで、文句を言わずに読み続けた。
ワインの歴史
ワイン大国フランスの話から始まる。まずはワインが生まれた歴史から入っていくので興味深く読めた。ローマ帝国とキリスト教がワインの普及に大きな役割を果たす。ローマ帝国が遠征先でワイン造りを伝えていき(と言うよりも兵士のためにワインを作らせ)、イエスの「ワインは私の血である」という言葉に乗せたキリスト教の布教とともに、ワインは瞬く間にヨーロッパ全土へと広がった。そして、王侯貴族に愛されることによって大きな発展を遂げた。これがワインの市場が拡張していったおおよその流れ。
肌に合わない
以降は、フランスからイタリア、その他ヨーロッパ諸国、そしてアメリカや南米などのニューワールド(ワイン新興国)をめぐりめぐっていく。この国の、どの地域の、どの品種の、どの生産者のという話になっていき、興味はあるものの、教養として"身につける"という話になると違ってくる。
ぶっちゃけ、私には「質より量」を標榜するニューワールドやイタリアの感覚が肌に合う(もちろん、これらの地域の全てが質より量というわけではない)。ワインはビジネスエリートの嗜みなのかもしれないが、いわゆるオールドワールドの格調高い世界には辟易とする。アロマだとかブーケだとかも、はっきり言ってよく分からない。ようは肌に合わないのだろう。
こちらの方が性に合う
セブン-イレブンでワンコインに満たない白ワインを買って飲んでいる私には、遠過ぎる世界だった。残念ながら、鼻持ちならない、辟易とするという感想が先行することになってしまった。飲んだら美味しいのだろうけれども、その違いが分かる上等な味覚を持ち合わせているわけではないし、そこに金を掛けようとも思わない(言い方を変えれば、掛ける金がない)。
私には、漫画『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎がふらっと立ち寄るような場末感ただよう店の方が性に合うし、魅力を感じる(もちろん、費用対効果を考えて)。
本書の雑感
本人は自覚していないが、これは単なるひがみ根性なのだろうか。ビジネスエリートの皆さんで、どうぞ踏み絵を踏み合って下さい。私はそこに割く時間を別のことに使います。これが本書を読んだ雑感だ。うーん、単なるひがみ根性にしか見えない...
とは言いながらも、歴史にまつわる話やワインの世界に新風を巻き起こした(というよりも引っ掻き回した?)ニューワールドの話は面白かった。自らの程度を知ることができたのも良かった(ビジネスエリートではなく井之頭五郎)。よし、今後ワインを飲む時は、ニューワールドかイタリアのワインを飲むことにしよう。