本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

〈本〉『「人を動かす人」になれ!』

【行動があって、その後に言葉が付いてくる】

120歳まで生きる

出口治明さんと鈴木喬さんの本を再読した後で、再読しようと思った本がある。日本電産の創業者、永守重信さんの本だ。先週の日経にどーんと、その元気そうな姿を披露していた。相変わらず、しゃんとしている。第5回永守賞の受賞者を発表する広告だった。永守賞については以下を参照願いたい。

 

www.nagamori-f.org


エステー会長の鈴木喬さんは「120歳まで生きるつもりだ」とその著書に書いていたが、永守重信さんもそのくらいまで生きそうだ。鈴木喬さんが現在84歳、永守重信さんが現在76歳。お二人とも、まだまだまだこれからだと思っているに違いない。元気なじいさんたちだ(失礼)。

 

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

 


出来るまでやる

ちなみに、永守重信さんの本で持っているのはこの一冊だけ。他の本を読んだことはないが、これがあれば十分だろう。そう思っている。巻末にはおまけとばかりに、永守重信さんといえばこれ!という例の言葉が、本人の直筆で綴られている。たまにぶつぶつと暗唱している言葉だ。

 

すぐやる 必らずやる 出来るまでやる

 
言うは易し行うは難し。特に「出来るまでやる」はそうだろう。しかしながら、何がしかの目標を打ち立ててそれを達成する人の多くは、出来るまでやった人なのだ。たまに呟いているのもそのためだ。今やっていることを止めてしまわず、出来るまでやる。


観察した先を考える

今回再読した出口治明さん、鈴木喬さん、そして永守重信さんの本を並べると、やはり出口治明さんの本が実務よりになり、鈴木喬さんと永守重信さんの本は経営よりになるだろう。そう思っていたが、抜き出した言葉を見直してみると、決してそうでもなかった。現場目線でも十分参考になる言葉がある。例えば、こちら。

相手がそれぞれに望んでいるものを早く見極めて、これを的確に与えていく。(中略)人を動かすのが下手なリーダーというのは、こうした絞り込み、すなわち相手が何を求めているのかをしっかりとつかまずに、あれもこれもと総花的に与えようとする。

 
人を観察することの大切さは分かっているつもりだが、それぞれが何を求めているか、この視点が足りないと感じて反省した。人を観察していると、短所が見えてくる。つい短所に目が向いてしまうのは人間の習性だろう。永守重信さんは、短所こそ、その人の個性であると指摘している。上司であろうが部下であろうが、その人をよく観察して、彼ら彼女らが何を求めているのか、その個性がどこにあるのか、これらを見極めて日々の言動に反映させていかなければならない。大切なことは、観察したその先にある。

 

タイムカードと整理整頓

永守重信さん独特の視点がおもしろい。こんなことをする経営者が他にいるだろうか!?

 

タイムカードを見せてもらう。欠勤や遅刻が目立つようなら取り引き中止を担当者に告げる。


取引先の工場は、従業員の勤怠状況から生み出される製品の質を推し量る。神は細部に宿る。細かいことの積み上げの結果が、その仕事の成果として結実する。理にかなった見方だと思うがいかがだろうか。

永守重信さんは、自社製品で不良品が発生した時には工場へ飛んでいくそうだ。整理整頓が行き届いていれば大きなお咎めはないものの、もし現場が煩雑になっていれば徹底的に叱責する。これにも強く共感した。トラブルが起こりやすい現場はたいがい乱れていたり汚れているものだ。

 

重役出勤というのは、社員よりも早く出社して遅くまで働くのが本来の姿である。

 

とことん視点がユニークだが、とことん的を射た指摘が多い。重役出勤については全くもってその通りだと思った。このくだりはヒントになる。様々なことをこのように逆説的に考えてみれば、物事の本質や改めるべき点が見えてくるのかもしれない。

 

人を動かす人間に土日も盆も正月もない

 
正直言ってこれにはドン引きしたが、これくらいやらなければ結果は伴わないのかもしれない。幻冬舎を立ち上げた見城徹さんの決め台詞「努力は、圧倒的になって初めて意味がある。」という言葉を思い出させる。

 

本書の雑感

意識面だけではなく、具体的な手法(しかもユニーク)も含めて参考になる一冊だ。手元にあるものが2008年でなんと第44刷。10年以上経っているわけだが、果たして今は何刷になっているのだろうか。

冒頭にあげた永守賞のように、自社ばかりでなく日本の産業を底上げしようという行動にも頭が下がる。こうなると、ドン引きした言葉ですら腹に落ちてしまうから不思議だ。行動があって、その後に言葉が付いてくる。とことんそう思わされた。