久し振りに読み返してみた本
【これからも版を重ねていってほしい】
妖怪並み
本を読んでいると、ちょいちょいその姿を現わす本がある。中野千枝『タテ社会の人間関係』だ。先日も『日本の天井』を読んで「また出た!」と思わされた。
私が『タテ社会の人間関係』に初めて出逢ったのは、海外出張前の成田空港内の書店だったと記憶している(羽田空港だったか?)。しかも、英訳版。このような表紙でとても目を引いたことを覚えている。
それから原著を読んだのは、今から数えると随分前のことだと思う。何に驚いたかと言えば、古書店で買い求めた手元にあるものが、2017年で第128刷という版の重ね振りだ。妖怪並みの重版出来ではないか。
- 作者: 中根千枝
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1967/02/16
- メディア: 新書
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日本の社会構造をはかるモノサシ
今回、『日本の天井』でこの本を再び思い出し、せっかくなので読み返してみた。いやはや、なかなかの気付きがあるではないか。さすが妖怪並みの古典である。
著者の中野千枝が『タテ社会の人間関係』を著した主旨は以下の通りだ。
日本社会の構造を最も適切にはかりうるモノサシ(和服における「鯨尺」)を提出することにある。
副題に「単一社会の論理」とある通り、日本のお国柄にだけ注目しているのではなく、日本の社会構造をはかるモノサシとしての「単一社会の理論」について言及している。
興味がある方は読んでみてもらいたいが、本書で展開されるリーダー論は笑うに笑えない一方で、頷かされるところもある。
ベストセラーには並べられない?
これとは別に、このような本を見つけて手を出してみた。
萌えるタイトルではないか。この本から引用れば、ベストセラーの定義は「最もよく売れた商品(本)」ということになるので、中野千枝『タテ社会の人間関係』が含まれていてもおかしくないし、逆になければおかしなことになる。
ところが、なかった。念のため読み返してみたのだが、なかった。漏れているのかもしれないが、私のフィルターには引っ掛からなかった(あったとしても、その程度の扱い)。
まぁ、ここで挙げられている本を見ればそれも理解できる。瞬間最大風速的に売れればその年のベストセラーに並べられることになるが、じわじわと版を重ねている本はこのような場に登場することはないのだ。
今回の雑感
が、『ベストセラー全史【現代篇】』の巻末にある戦後の総合ベストセラーリストを見た限り、30位にも入っていない。外山滋比古『思考の整理学』もなかった。ちなみに1位は黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』で580.95万部、30位は田村裕の『ホームレス中学生』で225万部だ(なお、調査は5年前)。
そうか、版を重ねているとは言えども、一度の重版で刷る冊数が少ないということなのだろう。が、『タテ社会の人間関係』のような妖怪本には、これからも版を重ねていってほしいものだ。