本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

記憶がなくなるほど酒を飲む

【それでも、酒は止められないのである】

記憶をなくして何が悪い

良いか悪いかはさて置き(一般的には悪いという判断をされることになる)、私は飲むとよく記憶をなくす。より正確に言えば、昨晩の発言を翌朝に覚えていないことが多い。はっきり言って、良くはないと思っている。妻の師匠は、私の行状を聞いて「えっ!あんたの旦那、記憶をなくすほど酒を飲むの!?」と驚きの声を上げたらしいが、はっきり言おう。悪いとは思っていない。

 

なぜかと言えば、私にとってはいつものことだからだ。他の人が飲んで記憶をなくすのとは意味合いが異なる。そう開き直っている。ちなみに私は朝型なので、記憶をなくすまで飲んだとしても翌朝はきっちり早起きする。もちろん二日酔いもない。と、いうようになった。そう、実のところ、それまではぐでぐでだったのだ。だらしない過去の自分が時たま脳裏をよぎり、恥ずかしくなる。が、今は断言できる。記憶をなくして何が悪い。

 

休肝日をあきらめた末に

さて、ぐでぐでだった私が、どのようにして記憶をなくすまで飲んでも翌朝は早起きできるようになったのか。答えは簡単。割って飲むようにしたのだ。私は芋焼酎が大好き。それまではロックでガバガバ飲んでいた。しかしながら、昨年末に犯しただらしない酒飲みの行状を振り返り(実際に家庭内でだらしない行ないがあった・・・)、今年の目標として「休肝日を設ける(今年こそ!)」ことにしたのだ。ところが...

 

実家に行ってその話をしたとたん、なんと父親から「わが家の辞書に休肝日や禁酒などという文字はない!」と叱咤されたのだ。これで目が覚めた私は悟った。そうだ、休肝日を設けるなどという遠大な目標を掲げるなんて愚かだった。毎日飲もう!ただし「割って」飲もうと。それまでの私は、酒を割って飲むなんて酒に対する冒涜だ!という意味不明のポリシーを掲げており、一貫して酒を割ることを拒否する愚か者だった。休肝日をあきらめた末にたどり着いたのが、酒を割って飲むということだったのだ。

 

酒飲みが至った悟り

酒を割って飲むようにしたところ、効果てきめん。二日酔いになることはなく、翌朝もすっきり目覚めることができるようになった。しかしながら、時と場合によるものの、引き続き飲むと記憶はなくしている。ここでまた悟った。そうだ、私の場合、記憶をなくすまで飲んでいるのではなく、飲むと記憶をなくしているだけなのだと。飲んだら記憶をなくす。これが私にとっての普通なのだ。この悟りに至った時に思い出したのがこの本だった。

 

 

くよくよなんかするものか

自分も何度懺悔したことか... という思いでページを繰ると、決して共感できる内容ばかりではなかった。しかしながら、強く同意し、深く共感してしまう書き手がいた。角田光代さんだ。あらためて読み直してみると、どのページもウンウンと頷きながら舐めるように字を追うことになった。

 

飲みはじめたら、途中でやめるということができないのである。どうしてもどうしても、できない。それこそ二十年近く、きりのよいところで飲むのをやめようと試みて、できない。逆立ちで歩けないように、できない。とことん飲むしかない。

 

逆立ちで歩ける人は、どうしてもできないことに置き換えてみよう。この後でこのように続く。

 

そして、とことんへの過程で、記憶がなくなるのである。

 

こうなると、角田光代さんの「くよくよ部」が活発に活動をはじめるのだそうだ(笑)誰かに失礼なことをしたり言ったりしていないか、何か面倒なことは起こさなかったかと、くよくよするのだそうだ。私は、しない。覚えてないから仕方がない。というよりも、私にとって「記憶をなくす」は飲む過程の一つとして組み込まれているからどうしようもないのだ。くよくよなんかするものか。で、角田光代さん。

 

一時期、私はこのくよくよがあんまりつらくて、酒を飲むのをやめようかと思ったことがあるくらいだ。もちろん、やめられなかった。

 

(笑)ぜひ角田光代さんと飲んでみたいものだ。しかしながら、角田光代さんの本を読んだことがない。これはいかんと反省させられた。何か読んでみなければ。こういうところは反省するのに、飲んで記憶をなくすことについては反省しない。我ながらまったく困ったものだ。と、反省のかけらも見られない感想を持ちながら、今晩は何を飲もうかしらと午前中から考えてしまうのだ。

 

ちなみに、こちらの『泥酔懺悔』はもの書きたちの酒にまつわるエッセイを集めたものだが、角田光代さんほか数名を除いて私には消化不良だった。やや看板負けしている感が否めない。酒飲みのエッセイでは、以下のようなものが面白いのでご参考までに紹介しておく。文庫本なので、左手に本、右手に酒で楽しめるのでご興味がある方はぜひ。

 

ぜんぜん酔ってません 酒呑みおじさんは今日も行く (双葉文庫)
 

 

 

酒にまじわれば (文春文庫)

酒にまじわれば (文春文庫)

 

 

今回の雑感

記憶をなくして何が悪い。飲んで記憶をなくしてしまうのではない。記憶をなくすために飲んでいるのだ。飲むという行為の中に、記憶をなくすというプロセスが組み込まれているのだ。我ながら恥も外聞もなくよくぞ言い切るものだと、ほんの少しだけ恥ずかしく思う。それでも、酒は止められないのである。